nijiken

ロックバンドRainbowを研究するブログとしてスタートしましたが、幅広い話題を取り上げたいと考え、ブログタイトルを変更しました。

DOWN TO EARTH アルバムレビュー

DOWN TO EARTH
1979年9月発売
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Guraham Bonnet(vo) Ritchie Blackmore(gt)

Don Airey(key) Roger Glover(b)

Cozy Powell(ds)

Produced By Roger Glover

 

1.All Night Long
2.Eyes Of The World
3.No Time To Lose
4.Makin` Love
5.Since You Been Gone
6.Love`s No Friend
7.Danger Zone
8.Lost In Hollywood

ロニーが去り、グラハムを迎えた今作は楽曲のポップ化が物議をかもしだしました。
しかし、今聞き返してみるとそれほどのポップ性は感じません。特に2、6、8は充分ヘビーな仕上がりです。問題の5にしても、コージーのドラムは重く、グラハムのボーカルは激しく響き、決してRAINBOWのイメージを損なう事はありません。
ただ、このころリッチーは、LIVEとアルバムの分離戦略を打ち出しており、ギターソロをかなり抑え目に弾いています。あと、妙に単音リフの曲が多いのも特徴です。 
またギターの音が他のアルバムと異なり、やけに中音域がブーストされていると感じます。

1.All Night Long
新ボーカリストグラハム・ボネットのお披露目ともいえる一曲です。ロニーをもしのぐ驚異的パワーで見事に歌いきっています。リフはおなじみの4度和音ですが、基本的にはメジャーコードのBフラットで進行し、サビでGmに平行転調するという構成で、カラッと明るいが軽くならないような工夫がされています。
sus4の使用もキャッチーさに拍車をかけています。
この曲はイントロのグラハムのシャウトが入っているアルバムバージョンと入ってないシングルバージョンがあります。
Liveでも定番曲です。
●グラハム・バージョン
1979年アメリカツアーでは本編、Since You Been Gone~Over The Rainbowからの流れで、1980年はアンコールで演奏されています。グラハム時代の聴き所は観衆との掛け合いの部分で、この頃のグラハムのパワーはもはや人間じゃありませんね。
イントロのギターリフはすんなり曲に入る日と何度もブレイクを繰り返す日があります。
アンコールで演奏される時は「Lazy」を導入部分として、「Blues」で締めるというパターンが多かったようです。また、エンディングでは一音キーが高くなるアレンジとなっています。
●ジョー・バージョン
ジョーのバージョンの大きな相違点は中間部の観衆との掛け合いを止め、ギターとの掛け合い~オリジナルのメロディを導入した所です。83年からはさらにAメロをジョー流の解釈でFakeするようになり、途中でブレイクの入るアレンジへと変化しています。
その完成形といえるバージョンは12インチシングル「Can`t Let You Go」のB面に収録されており、もはやグラハム・バージョンとは別物と言えます。ジョーが手掛けた既存のRainbowの曲としてはもっとも完成度が高い作品だと思います。

2.Eyes Of The World
リッチーもお気に入りのこの曲はイントロのホルスト「惑星」が印象的です。(オリジナルは5拍子のところを4拍子にアレンジしている)
この曲は当時のLiveでオープニングに使われており、いつもの”We must be over the Rainbow”から間髪いれずに、この曲が始まった時は鳥肌が立つほど感動しました。
リッチーお気に入りの一曲でありながら、演奏されたのはグラハム時代のみに限定されています。
ちなみにドゥギー・ホワイトが、この曲を歌いこなす事の難しさを語っておりました。

グラハム時代のSetでのオープニングはいつもの「Over The Rainbow」と異なり、この曲のイントロのテープから始まるのが特徴です。
また、演奏は基本的にスタジオ・バージョンに準じていますが、ブレイク時のギターソロは日によって、長いソロとなっています。
ギターソロは非常に計算された作曲系のソロです。
余談ですが、昔プロレスラーのビッグ・バン・ベイダーのテーマ曲に使用されていました。

3.No Time To Loose
単音リフに乗せたミディアムナンバーです。コージーのブレイクが最高にカッコ良くこのアルバムがポップと言われた理由はいかにもなバックコーラスの多用でしょうね。また、スライドギターでの短いメロディアスなソロが多く、アルバムとLIVEの分離政策が如実にあらわれています。
4.Makin’ Love
リッチーとしては、こうしたミュート気味の単音リフは結構珍しいんじゃないかと思います。何度かLiveでもさわりが披露されていますが、本格的な演奏はなかったようです。
エンディングのソロは、パープル時代の「Anyone’s Daughter」っぽいですね。

5.Since You Been Gone
ラス・バラードのカバー曲第一弾となったこの曲は、非常にトラディショナルなブリッティッシュポップの傑作です。もし、この曲をジョーが歌っていたとしたらかなりポップな出来になったでしょうが、グラハムのパワフルな歌唱はポップの範疇をはるかに超えています。まさに超人的です。
リッチーのソロは得意とも言えるメジャーコードでの歯切れよいプレイを聞かせます。
ポップ化の象徴であり、バンド内の空気を険悪にしたといわれる問題作のはずですが、その後コージーブライアン・メイと一緒にカバーしていますし、グラハムもインペリテリと一緒にやったりしています。何だか不思議な魅力を持った楽曲と言う事でしょうか。
Liveでも必ず演奏されます。
●グラハム・バージョン
1979年は、Since You Been Gone~バッハのブランデンブルグ協奏曲第三番第三楽章~Over The Rainbowという流れでしたが、1980年には、ブランデンブルグ~Since You~Over The Rainbowと変更されています。どちらかというと後者のほうが自然な流れに思えます。
ブランデンブルグはギターとキーボードのハーモニーが美しく、ドンとリッチー、2人のテクニカルな演奏が楽しめる逸品です。
Since本編は若きグラハムの魅力たっぷりの歌声が存分に楽しめます。パワフルでありながらポップセンスを感じさせる歌唱で、こういうボーカルを聴くと、グラハムの魅力はラウドな部分だけじゃない事を痛感せざるを得ないですね。
曲はそのままOver The Rainbowへとメドレーで流れて行きます。この時期は、オープニングでこの曲のバンド演奏が無いため、ここに挿入されているのですが、RainbowバージョンのOver The RainbowはSince You Been Goneと同じGメジャーなので、このアイデアが生まれたのではないかと思います。ここで聴かれるリッチーのソロはこの上なく美しいプレイで、何となくスコーピオンズでウリ・ロートがやっていた荒城の月を思い出してしまいます。
●ジョー・バージョン、ドゥギー・バージョン
両者のバージョンとも、アンコール等にメドレー形式でワンコーラスだけ演奏されるのがほとんどでした。
ちょっとしたサービスといった感じでしょうか。

6.Love’s No Frend
LiveではMistreatedの代わりに演奏されるようになったブルーズナンバーです。構成もほとんど同じで後半部分はリズムが倍にスピードアップする中、リッチーのギターソロが爆発します。1982年からは「Tealin` Out My Heart」がこの曲の代わりに演奏されるようになりますが、基本的に同じ構成となっていました。
●グラハム・バージョン
グラハムがオーディションの時に歌ったといわれる「Mistreated」もこんな感じだったのだろうな、と思わせるパワフルな歌唱が光ります。
この曲の最大の聴かせどころは後半のギターソロで、残されたどの音源を聴いてもリッチーのプレイは見事というしかありません。
●ジョー・バージョン
1981年のみ演奏されていました。
ジョーはオリジナル・キーで頑張っており、それなりに歌いこなしているといった印象です。

7.Danger Zone
このアルバムではvo不在時にセッションを繰り返し、作成された部分が多いと考えられます。全体を通して新加入となったドン・エイリーとの計算されたからみが目立ちます。この曲でもかっこいいキメがふんだんに聞くことができます。

8.Lost in Hollywood
コージー版「Rock’n Roll」というべきドラムのロールから始まるこの曲は、緩急織り交ぜたRainbowらしい名曲です。シンセベースと厚いコーラスが加わりましたが、本質は変わらぬロックバンドの意地を感じます。
Liveでは「A Light in Black」ありの、「Diffucult To Cure」ありの30分近い組曲として本編ラストでプレイされていました。
●グラハム・バージョン
複雑な構成です。基本的には、
Keyソロ~「Lost In Hollywood」~「A Light In Black」~ギターソロ~ベートーベン第9~Keyソロ~Drソロ1812~「Lost In Hollywood」
といった流れとなっています。
ここでの「A Light In Black」は間奏のギターとKeyのキメの部分だけです。
リッチーのソロはアーミングやフィードバックを駆使したトリッキーなもので、そのままベートーベン第9へと繋がっていきます。(「Difficult To Cure」とはアレンジが違います。)その後のドン・エイリーのソロは、「未知との遭遇」や「ワルキューレ」等、聞き覚えのあるフレーズで構成されています。(日本公演では「上をむいて歩こう」が定番)
コージーのソロは言うまでもなく、「1812」です。(有名なグラハムの絶叫Cozy Powell 3連呼はこの直後でした)

●ジョー・バージョン
1981年では、この曲を引き続き演奏しています。ただし、ベートーベン第9は「Difficult To Cure」として独立した曲として演奏されており、最終的に「Long Live Rock`n`Roll」へと繋がってゆくので、メドレー的な扱いと言えます。