nijiken

ロックバンドRainbowを研究するブログとしてスタートしましたが、幅広い話題を取り上げたいと考え、ブログタイトルを変更しました。

DIFFICULT TO CURE アルバムレビュー

Difficult To Cure
1981年4月発売
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Joe Lynn Turner(vo) Ritchie Blackmore(gt)
Don Airey(key) Roger Glover(b)
Bob Rondinelli(ds)
Produced By Roger Glover

 

1.I Surrender
2.Spotlight Kid
3.No Release
4.Magic
5.Vielleicht Das Nachste Mal(May Be Next Time)
6.Can`t Happen Here
7.Freedom Fighter
8.Midtown Tunnel Vision
9.Difficult To Cure

 

「Long Live Rock`N`Roll」から意識していたアメリカ制覇を実現したアルバムで、全米30位を記録しています。発売当時、前作から更にポップ方向にベクトルを向けたアルバムだったことが日本では大論争を巻き起こしました。特に「I Surrender」と「Magic」は過去に類を見ないほどにポップな楽曲で、相対的にパワー不足に感じさせるボーカルのジョー・リン・ターナーに対する不安感も相まって、かなりのファンがコージー・パウエル加入の"MSG"に流れたような記憶があります。
アルバム作成中、グラハム・ボネットが歌入れ途中だったものを途中でジョー・リン・ターナーに差し替える事態となりました。それは「I Surrender」と「Midtown Tunnel Vision」だったようです。ロジャー・グローバーによると、グラハムは前者を「唯一の良い曲」と評価、後者を「前にも同じことをやったじゃないか」と酷評したとのことです。
また、アルバム作成中、ジョー・リン・ターナーは風邪をひいていたと後日自分で語っていました。確かにちょっと鼻声ですね。

 

1.I Surrender
ラス・バラードのカバー第二弾。選曲の勝利です。
この曲はラス・バラードのバージョンが存在していないため、書下ろしのような形になっていますが、真相は不明です。誰かが発掘したのか?それとも書下ろしを依頼したのか?
ともあれ最高の名曲であることは間違いありません。緊迫感のあるイントロから、哀愁に満ちた美しいメロディをジョーが見事に歌い上げています。リッチーのギターソロもかなり計算された名演で曲のグレードを大きくUPさせています。
Liveではギターソロ部を大幅に拡張し弾きまくります。コード進行がキャッチーなのでメロディを乗せやすいのは間違いありませんが、美しく流麗なインプロバイスの記録が多く残っています。

 

2.Spotlight Kid
一転してリッチーお得意の4度和音ルート親指押さえリフが炸裂する後期の代表曲が始まります。このアルバム発表以降、ステージのオープニングナンバーの座を守り通した曲です。
この曲はギターに尽きますね。イントロのカッティングから素晴らしい!ソロは解放弦大活用パターンからクラシカルなユニゾンフレーズまで駆使され、本当に見事な出来です。


3.No Release
この曲、リフ・コード進行はリッチーとしては珍しいパターンでZEPの香りが漂います。ボブ・ロンディネリのドラムスタイルはジョン・ボーナムに近い印象があり、もしかしたら曲でも大きな貢献をしているのかもしれません。ギターソロは解放弦活用パターンですが、かなりダイナミックかつメロディアスな構成となっており、ギター弾きにはコピーし甲斐があるかと思います。


4.Magic
この曲を聴いて昔からのファンは烈火のごとく怒った、と言われています。
単純にポップだったからではなく、今までのRainbow像をぶち壊す楽曲だったと判断されたのかもしれません。確かにフォリナーやジャーニーに近い、よく出来た産業ロックですね。
ジョー・リン・ターナーの適性は元々こちらの方に近いので問題なくこなしているのですが、問題はリッチー・ブラックモアです。バッキングもオブリガードも、更にソロもぎこちなく、聴いている方がドキドキしてしまいます。

それでも、私は好きです。


5.Vielleicht Das Nachste Mal(May Be Next Time)
リッチー・ブラックモアにとっての「哀しみの恋人達」であり、見事なボトルネック奏者である事を証明した名曲です。あまりにもリッチーらしいプレイが凝縮されており、我々ファンには堪えられません。
ドン・エイリーがインプットしたと思われるコード進行も美しく、1984グラミー賞のベスト・インスト部門にノミネートされたのも納得です。
ステージでもたびたびプレイされており、テープからスタート、2コーラス目からバンドが演奏を始めるのが定番でした。


6.Can`t Happen Here
仲間内で”スモーキング・オールナイト・ロング・オン・シルバー・マウンテン”と呼ばれていたらしいこの曲は当然4度和音のリフで作られています。しかしこれら過去の名曲と異なるのはリズムがかなり細くなっているところです。この原因としてはミキシングやボーカルの違いもあるのでしょうが、最も重要だったのはコージー・パウエルが居なくなったことでしょうね。コージーがRainbowサウンドの大きな部分を担っていたことが良くわかります。売れるために選択した結果、失ったものは決して小さくはなかったように思います。
ギターソロは「Burn」的アルペジオから始まります。発表時ギター初心者にもコピーしやすいプレイとして人気がありました。
Liveでも常連曲でしたが、84年の日本公演ではやけに速い演奏でカオスです。


7.Freedom Fighter
ボブ・ロンディネリがリズムのアイデアを出したと言われる曲です。なるほど、16ビートでブレイク多用されつつ、手数も多いですね。
楽曲はアルバムに必ず一曲は入っている単音リフ系ですが、超シンプルかつコード進行も単調なので地味なイメージがある曲なのは否めません。
ギターソロにはオクターバーが使用されております。これもギター初心者にもおススメです。


8.Midtown Tunnel Vision
グラハム・ボネットが酷評したと思われるこの曲はもろにジミヘントリビュートでE7(♯9)が効いています。確かに「Love’s No Friend」に似ていますが、それがブルースといってしまえば仕方ないところでロジャー・グローバーが怒るのも納得です。
ギターソロはきっちりと練られており、起承転結がしっかりしています。ギター・オリエンテッドなこのアルバムを象徴するかのようなプレイです。

 

9.Difficult To Cure
もともと、1977年あたりからステージで演奏されていた曲です。見事なアレンジでベートーベン第九を再構築しています。
この曲でのオクターバーは必要不可欠。
リッチー・ブラックモア、ドン・エイリー共に素晴らしいソロパートがあります。
Liveでは外すことのできないRainbowの代表曲ですが、再結成Deep Purpleでも取り上げられていた唯一のナンバーです。
1984年日本公演ではオーケストラとの共演が実現しており、ライブを記録したDVDやCDで視聴することができます。