nijiken

ロックバンドRainbowを研究するブログとしてスタートしましたが、幅広い話題を取り上げたいと考え、ブログタイトルを変更しました。

BENT OUT OF SHAPE アルバムレビュー

BENT OUT OF SHAPE
1983年9月発表

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Joe Lynn Turner(vo) Ritchie Blackmore(gt)

David Rosenthal(key) Roger Glover(b)

Chuck Burgi(ds)

Produced By Roger Glover

 

1.Stranded
2.Can`t Let You Go
3.Fool For The Night
4.Fire Dance
5.Anybody There
6.Desperate Heart
7.Street Of Dreams
8.Drinking With The Devil
9.Snowman
10.Make Your Move

「RISING」と並び最高傑作の呼び名の高い本作をもって、
RAINBOWは一旦終焉を迎えました。
アメリカマーケットを意識した作りだった前2作より、さらにポップ路線に磨きがかかっていますが、ポップではあっても哀愁漂うRAINBOWらしい曲ばかりです。

当時のリッチ-のコメントから察するに、思いはすでにDEEP PURPLEに飛んでいたと考えられます。この為アメリカマーケットを意識することなく自分のやりたいようにやった結果がこの名作を生んだのでは無いでしょうか。
特に2,6,7,のメロディーラインには鳥肌ものの感動を覚えます。

ただし、これらのポップナンバーではバッキング部においてリッチーの存在感は皆無です。
ほとんどデイヴのキーボードにまかせっきりとなっていますので、ともかくリッチーのギターが聴きたいんだ!という方には向かないアルバムではあります。
それを差し引いても素晴らしい名盤だと思います。


1.Stranded
今までのRAINBOW像とかけ離れた意欲作。アレンジに80年代の香りがします。リッチ-のソロも攻撃的で新境地を切り開いています。このアルバム全編に通じる事ですが、ともかくジョーが素晴らしい!
超人的ボーカリストだったロニ-、グラハムと比較されるとどうしても分が悪かったジョーですが、感情の込め方はうまく心にしみるボーカルを得意としています。
当時のLIVEではSTARGAZERからメドレーで演奏されていて、途中観客との掛け合いが入るようになっていました。カーディフでのLIVEバージョンはのちに12インチシングル盤「Can`t Let You Go」のB面に収録されましたがオーバーダビングされまくりで原型を留めていませんサビにおいて観衆の合唱が聞こえますが、これはどうもサンプリング音のようです。ただしものすごくカッコいいです。
84年日本公演での位置づけとしては「Long Live Rock`N`Roll」の代わりに相当しており、曲の中間部で観客との掛け合いや、「Hey Joe」が挿入されています。
カーディフでの演奏では、ちなみにこの曲のリフはPURPLEの「THE BATTLE RAGES ON」中「ANYA」に流用されています。

2.Can`t Let You Go
パイプオルガンの荘厳なフレーズから始まるこの曲もジョーのvoが光ります。こんなにもポップな曲なのに80年代のアメリカン産業ロックとは一線を画する雰囲気があります。よってこれも後期RAINBOWの名曲に認定!
ジョーとデイヴの良い仕事が目立ち、リッチーの影が薄いこの曲ですが、SOLOに関してはポップながら、「MAGIC」のように取ってつけた物ではなく、オリジナリティあふれる名演です。(どうやっても他の人にはこのソロは弾けない!)

3.Fool For The Night
スライドギターのイントロから始まるハードポップ。HRとPOPの融合が完成をみた1曲です。
「Can`t Happen Here」にも共通するジョー期RAINBOWらしいメジャーなナンバーですが、これもリッチーの存在感があまり感じられません。
ギターソロはオクターバー(ピッチシフター)を使用したペンタトニックプレーです。
スタジオ盤ではローゼンタルのキーボードが目立つ、ポップかつキャッチーな印象が強かったこの曲ですが、Liveで聴くと立派なHRナンバーである事に気がつきます。
アレンジはほとんど変わっていないのですが、テンポが少し速めにプレイされ、なによりLiveではリッチーのギターが目立ちます。これらの事からスタジオ盤ではわからなかったこの曲の本当の魅力を感じる事ができます。
もしかするとこの曲、後期レインボーが模索し続けていたポップなHRの完成形だったのかもしれません。84年日本公演でもプレイされました。

4.Fire Dance
ここでようやく疾走ナンバーの登場ですが、この曲のリフはいつものリッチーとちょっと系統が違っています。普通のHMバンドっぽい、メカニカルな開放弦ルート鳴らしっぱなし単音リフです。
SOLOは手癖一発ありがちなフレーズの集合体ですが、リズムが思いっきり突っ込んでる為、かっこよく聞こえます。多分普通に弾いてたら面白くも何ともなかったでしょうね。
中間部のリフはその後、パープルの「THE BATTLE RAGES ON」に流用されています。リッチーもかなり気に入っていたらしく、再結成PURPLEのリハで何回も弾いていたとのこと。
ちなみにこのリフは6弦のチューニングをDに落として弾いています。(その為SOLOには6弦を使えなかったらしい。)ともかくギターリフありきの楽曲でリッチーここにありとこのアルバムでは初めて主張しています。
1983~84年のアンコールナンバーです。
間奏時のリフは6弦が一音下げチューニングで弾かれていますので、当然ギターを取り替えてのプレイとなっています。
演奏はかなりラフで、個人的にはスタジオバージョンの方が好みです。

5.Anybody There
「Maybe Next Time」路線のインストですが、決まったメロディーはなく感情のおもむくままに謳いあげたといった感じです。
それなのにちゃんとした曲になっているのは、デイヴが書いたと思われる秀逸なコード進行のおかげでしょう。見事なオリジナリティーに溢れたギターです。

6.Desperate Heart
私の大好きなこの曲は珍しく16ビートです。
やはりチャック・バーギ効果でしょうか?リズムがタイトでアルバム全体を通じてバンドの一体感を感じます。チャックはコージーやボビーのように派手さはないですが、楽曲を映えのテクニックはかなり高いと感じます。
また、ジョーの細かい歌いまわしが抜群にかっこいいです。
リッチ-のSOLOですが、ジャストなノリかつ最高に泣いたギターです。
リッチ-のギターは16ビートにフィットするのかもしれません。
後期RAINBOW最高のプレイのひとつでしょう。

7.Street Of Dreams
RAINBOW最高の名曲です。初めて聞いたとき、イントロだけでそう確信しました。
インタビューを総合すると、アイデアを出したのはジョーがメインだったようです。本当に素晴らしいメロディラインです。
またバンド全員がそれぞれの持ち味を結集した演奏だと思います。
特にリズム隊の頑張りが大きい!いつもは語られる事の少ないロジャーのベースですがこういうポップな曲ではいいライン弾きますね。チャックのは貢献度は特に高く、曲の良さを引き立たせるタイトなドラムを叩いています。もし、この曲をボブ・ロンディネリが叩いていたとしたらちょっと違った印象になったでしょうね。
ギターはイントロが全てですね。ここ数作で頑固に使ってきたオクターバーがついに花開いた瞬間です。(ほんとはオクターバーじゃなくピッチシフターらしいですが)
1984年日本公演で「Drinkin` With The Devil」と入れ替えでプレイされています。この曲のテンポは速めでアレンジもほぼ変わりませんが、致命的なのは音の薄さです。リッチーのギターは、バッキングでの出番があまり無いため、キーボードが頑張らなくてはならなかったのでしょうが、ミキシングのせいか全く前面に出てきておりません。

8.Drinking With The Devil
ついに出たリッチ-お得意のGm4度和音のリフの曲!少しひねりを効かせた細かい部分がGOODです。
SOLOはまたしても手癖一発ですが、エンディングでLAZY・BURNでおなじみのフレーズが登場します。1983年のアメリカ、ヨーロッパツアーではプレイされていたこの曲ですが、翌1984年の日本公演では結局プレイされていません。ジョー時代に作られた疾走ナンバーとして、1.2を争う傑作だと思うのですが、残念です。
アレンジはスタジオ盤とほとんど変わりません。

9.Snowman
絵本を基にしたアメリカのアニメ「スノーマン」のテーマ曲「Walking In The Air」をカバーしたインストです。その哀愁に満ち溢れたテーマはキーボードで演奏され、中盤からリッチ-の嵐のようなギターが入ってきます。
特に終盤のフレーズは素晴らしい名演です。

10.Make Your Move
そしてこの名盤をしめくくるのは、リフが「A Light In Black」を彷彿とさせるこの曲です。しかし全体的に雑な仕上がりでメロディのフックもありません。なんとなくボーナストラック的な存在のこの曲を最後に解散となったのは少しさびしい気がします。
SOLではキルキン以来のハミング・バード奏法が聴けますけど。