nijiken

ロックバンドRainbowを研究するブログとしてスタートしましたが、幅広い話題を取り上げたいと考え、ブログタイトルを変更しました。

レインボー楽曲研究

RAINBOWの楽曲に関していろいろ研究してみました。

◆曲作りについて
RAINBOWの曲作りは、まずリフとコード進行・バッキング等をリッチーが提示し、ボーカリストがメロディー・詩を付け、その後他のメンバーがおのおのアレンジしていくといった流れと思われます。

 リッチーの曲作りのバリエーションはそんなに多彩では無い為、懸念されるのはマンネリズムな訳ですが、新味がなくなる前にボーカルがクビになっていたのでそういう事態は生じませんでした。(HRに関して最も重要かつ難しいのはリフ・展開なのでリッチーがバンドの中心だったのは変わりありません。)ボーカリストに歌唱だけでなく曲作りの才能を求めていた訳です。

●Ritchie Blackmore`s Rainbow
Deep Purpleを離れ、やりたい事をやれる喜びが伝わってくるアルバムです。
アルバムのハイライトともいえる「Man On The Silver Mountain」、「16th Greensleeves」は「Smoke On The Water」を彷彿させるミディアムテンポでの4度リフを駆使した楽曲です。
「Smoke~」が大ヒットしていながら、その後このパターンを頑なに避けていたリッチーですが、ここでその封印を解き、似て非なる名曲を作りあげています。
その原動力となったのは、やはりロニー・ディオの存在でしょう。
ギランとは異なるメロディ・センスと中世的な歌詞、コブシをもって歌い上げるスタイルで、その後のHRバンド達に与えた影響は絶大であったと言わざる負えません。
また、元エルフのメンバー達のインプットもかなり大きかった物と思われます。
「Snake Charmer」「Still I`m Sad」「Black Sheep ~」「If You Don`t~」といった曲では、弾けるようなバックでリッチーとロニーを盛り立てており、彼らでなくては作れなかったであろう世界を構築しています。

●Rising
このアルバムは5人がそれぞれのパートを考えるというパープルの「In Rock」方式で作られており、「A Light In Black」「Talot Woman」といった曲でその効果が如実に現れています。
各メンバーがエゴをぶつけ合うその様は、尋常でない緊張感を生んでおり、
二度と再現できないであろう名演となっています。
実際、このアルバムのナンバーはLiveで積極的に取り上げられておりません。うがった見方かもしれませんが、リッチーはLiveではアルバムでの演奏を超える事が出来ないと感じていたのではないでしょうか? 
ただ、各楽曲の出来は普遍的な名曲揃いとは言えず、あくまでもこの時のメンバーがこの時期にやった事に意味が生じたアルバムだと思います。

●Long Live Rock
大作志向とアメリカ市場を意識したコンパクトな曲が混在する中途半端なアルバムという評価がされがちな作品ですが、個人的には全く納得できない話です。それを言ってしまえば「Rising」も同じような評価が可能だと思うのですが。実際には、前作の方向性を踏襲して様式美HRを確立した名盤でしょう。
ただ、途中でベース、キーボードがコロコロ変わった為、前作のような緊張感は多少希薄となっています。
その代わり各楽曲のクオリティは非常に高く、普遍的な魅力に満ち溢れています。ロニーのメロディ・センスは健在で捨て曲は全く見当たりません。
「Kill The King」は後の様式美HRバンドのひな型として普遍化しており、レインボー後のバンドによって消費されつくした結果、一般的なHMを表す記号になってしまった感すらありますが、今聴いても全く劣化していない情熱の感じられる名曲です。

●Down To Earth
ロニーというパートナーを失ったリッチー。代わりにこのアルバムではロジャー・グローバーを新パートナーとして曲作りを行っています。
アメリカ市場を意識したコマーシャルな楽曲を作る為に呼ばれたロジャーですが実際に製作された音は「Since You Been Gone」を除けば、Purpleを彷彿とさせる典型的ブリティッシュ・ロック・アルバムとなっています。
このアルバムでロジャーの行った仕事は、リッチーのアイデアにポップな感覚をプラスするという一点に絞られたようです。
「All Night Long」はその典型的な例で、リッチー得意の4度リフを発展させ、Aメロをメジャーに転調、sus4を多用するといった仕掛けを導入し、垢抜けたHRナンバーへと変身させています。あくまでもリッチー主体の曲作りであるのがミソで、ここにロジャーを呼んだ意味があったのでしょう。
またロジャー自身が弾くベースも見逃せません。元々ポップセンス豊かなラインで定評のあったロジャーですが、ここでも変わりなく、楽曲のクオリティ向上に貢献しています。
もう一点、大きな影響を与えたのはドン・エイリーのプレイです。「Eyes Of World」「Lost In Hollywood」などはドンの存在なしでは作りえなかったであろう、スケールの大きい楽曲となっています。

●Difficult To Cure
コマーシャル路線にはぴったりのボーカリスト、ジョーを獲得したレインボーですが、このアルバムでは3週間の期間しか与えられなかった為、ジョーのインプットは殆どありません。基本的にリッチーとロジャーで作られた前作と同一線上の作品です。
グラハムはこのアルバムのデモを聴いた時、「”I Surrender”一曲だけが良い曲で、あとは悲惨な曲ばかりだ。」と思ったそうです。実際、最悪のアルバムになる可能性があったのは、捨て曲が数曲あることでわかります。
しかし、このアルバムを救ったのは、リッチーのギターでした。
前作では、LiveとStageを分離する作戦の為、かなり抑えたギターを弾いていたリッチーでしたが、ここでは人が変わったように弾きまくっています。おそらく全アルバム中一番のギター・オリエンテッド・アルバムだと思います。
 2曲のインストも素晴らしい出来ですが、中でも「Spotlight Kid」は出色です。イントロのカッティングから、バッキング、コード進行、ソロと息つく暇を与えない見事な楽曲です。
ロジャーは「”All Night Long”は仕事で、”Can`t Happen Here”は書きたくて書いた曲だ。」と語っておりますが、どちらもリッチーの4度リフを中心に、メジャー・コードへの転調、sus4の多用という共通点があります。

●Straight Between The Eyes
コマーシャル・ナンバーを書けるボーカリスト、ジョーのおかげでカバーに頼らずにすんだのか、久々に全曲オリジナル曲となっております。
しかし、、、前作まではかろうじて残っていたWETな空気は影をひそめ、カラッと元気なアメリカンHRが展開される異色作となってしまいました。
特に「Rock Fever」、「Power」、「TiteSqueeze」にはそういったアメリカン・テイストを感じます。
皮肉な事にコマーシャルに徹した「Stone Cold」が以前までのレインボーを感じさせる数少ない曲となりました。
「Death Ally Driver」は80年代の「Highway Star」ともいうべき疾走ナンバーですが、こういう曲をやればやるほど、過去のレインボーとのギャップを感じさせる結果となっているのは寂しいところです。

●Bent Out Of Shape
「Down To Earth」から試行錯誤を繰り返してきた、ポップとHRの融合が遂に開花した作品です。前作で感じさせた、アメリカン・テイストが今作ではすっかり消えうせており、WETな感触の名盤となっております。
このアルバムは演奏面での緊張感やLive感覚には乏しいものの、楽曲自体が素晴らしく、誰が演奏してもある程度良い物になるであろう普遍的魅力があります。そういう意味では「Rising」と対極にあると言えるでしょう。
曲作りのパターンとしては過去のアルバムとは異なり、明確なリフの無い曲が目立ちます。
これはジョー主導の楽曲(「Street Of Dreams」、「Desperate Hear」、「Can`t Let You Go」)が増えた事、デイヴのインプットが増えた事が理由と思われます。
特に「Street Of Dreams」、「Desperate Hear」は殆どジョーのアイデアであったのではないでしょうか。「Street Of Dreams」はHRの範疇にとどまらない名曲で、どんなアレンジでも通用する曲だと思います。
◆Keyについて
一部で、リッチーはヴォーカリストの事を考えず、得意なKey(Gマイナー)で曲を書くという風に思われていた節があります。しかし実際には逆で、こんなにヴォーカリスト思いなギタリストは他にいないでしょう。

ギラン、グレン、ロニー、グラハムはあまりKeyを考慮しなくても良かった為、リッチーも得意なKeyで曲作りを行っていたと思われます。みんな超人ヴォーカリストですから。
しかし、ジョーとドゥギーに関してはそうも行かず、明らかに彼らに合った曲作りをしております。(ジョー時代はAマイナーが非常に多くGマイナーはほとんどありません。)

さらにLive ではその傾向著しく、「Long Live Rock`N`Roll」は、オリジナルGマイナーをEマイナーへ、「Still I`m Sad」はEマイナーからBマイナーへ、Key を下げています。
既製の曲のKey を変える事は曲のイメージに大きくかかわってくる為、一般的ミュージシャンはあまりやりたがらないのですが、リッチーは全く気にしてないみたいです。それよりヴォーカリストが実力を100%出せるようにしようという意図が感じられます。

◆リフについて
RAINBOW の曲の中でもっとも重要なのがギターリフです。リッチーのリフにはいくつかのパターンがあります。
1.4度和音によるリフ
「Man On The Silver Mountain」「All Night Long」「Spotlight Kid」等、名曲のほとんどはこの4度和音によるリフで作られています。
このパターンはまさにリッチーの独壇場であり、誰も彼にかなう者なしです。

2.単音でのリフ
「Lost In Hollywood」「Starstruck」「Stargazer」等、多数あります。
Stargazer」のようにコード分解プレイと、「Long Live Rock`N`Roll」のようにメロディーを弾いているものがあります。
3.コードプレイ
「Power」「Do You Close Your Eyes」等メジャー感がある曲に多いですね。