Straight Between The Eyes
1982年4月発売
Joe Lynn Turner(vo) Ritchie Blackmore(gt)
David Rosenthal(key) Roger Glover(b)
Bob Rondinelli(dr)
Produced ByRoger Glover
1.Death Alley Driver
2.Stone Cold
3.Bring On The Night
4.Tite Squeeze
5.Tearin`Out My Heart
6.Power
7.Miss Mistreated
8.Rock Fever
9.Eyes Of Fire
前作で念願のアメリカ進出を果たしたRainbowはさらにアメリカ市場を意識した作品を作り上げました。それが7枚目になるこのアルバムです。
グラハム・ボネットを想定して作られていた「Difficult To Cure」と異なり、ジョー・リン・ターナーが曲つくりで大きく貢献するようになっています。
ジョー自身も一番気に入っているアルバムのようで、前作に比べてもかなり伸び伸びと歌っています。
ジョーの音域に合わせた曲ばかりのようで、Aマイナー、Eマイナーの曲がほとんど曲となっております。
コマーシャルな曲を作れるジョーのおかげで、いままでカバーに頼らざるおえなかったポップ路線の曲がオリジナルだけで構成できるようになりました。
しかし、あまりにアメリカンなサウンドを模倣しすぎたのか、このアルバムはRainbowというバンドのブリティッシュな湿り気や気品を失っているように感じます。
1.Death Alley Driver
アルバム発売当時、この曲についてはロジャー・グローバーが「1982年のハイウエー・スターであり、もちろんショーのオープニングに演奏する」と語っていたことからもわかるように、久しぶりの疾走HRナンバーです。スピード感に満ちたギターソロはバッハの「トッカータとフーガ」から引用されたフレーズで、クラシックとの久々の融合に、私を含めたファンが”リッチーがHRに帰ってきた”と大喜びしていたことを昨日のことのように思いだします。
ロジャーの言葉の通り、1982年当初はコンサートのオープニング曲として演奏されていたのですが、その後すぐにSpotlight Kidに戻され、Setから一時消滅してしまいました。ちなみに1983年より、本編ラストに採用され、1984年の日本公演でもプレイされていますね。Liveではイントロのバイクの爆音を表現したアーミングも律儀に再現しており、ほぼスタジオ盤に準じた演奏となっております。ただし、テンポはかなり速く、ギターソロの部分でメロメロのプレイになっている事が多かったようです。
当初の思惑と異なり、オープニングナンバーから変更された理由は明らかではありませんが、イントロの激しいアーミングでチューニングが狂ってしまう事が多々あった為ではないでしょうか?
2.Stone Cold
「Difficult To Cure」ではカバー曲に頼っていたポップな楽曲が遂にオリジナル曲として作られるようになりました。フォリナーを彷彿とさせる佳曲です。
この曲のギターソロは今までにないタメが効いていて、感情がダイレクトに伝わってくる名演となっております。このアルバムからリッチーのギターの方法論は明確に変化しており、タメを意識したプレイが如実に増えています。ロジャー・グローバーは当時のインタビューで「リッチーは今までで一番良いプレイをしてくれた」と語っておりました。
ジョー・リン・ターナーのボーカルはこういう曲で一番光ります。本当に素晴らしい歌唱です。
Liveではなぜかギターソロを弾いていない事が殆どのようでした(少なくとも私は一度も聴いた事がありません)。バッキングも、当時のリッチーのギターサウンドは歪みすぎていて、この曲にはフィットしていませんでした。ジョーのボーカルはさすがに良いのですが・・・残念です。
その後、ドゥギー時代・Blackmore`s Nightでもアンコールで演奏されています。
3.Bring On The Night
珍しく16ビートの楽曲です。この曲はリッチーも久々にバッキングでオクターブ奏法を使い頑張っています。
ポップセンスに富んだ佳曲です。ギターソロはこのアルバムでは唯一ジャストなリズムで弾いており、難度が高いプレイとなっています。
4.Tite Squeeze
前作より多用しだしたオクターバーを活用したソロが印象に残る地味な曲です。ボブ・ロンディネリはコージー・パウエルよりもジョン・ボーナムを彷彿とさせるドラマーですが、ちょっとZEPっぽいナンバーといえるかもしれません。
5.Tearin`Out My Heart
開放弦を大胆に活用したアルペジオとギターソロが面白いバラード曲です。Rainbowの伝統通り、メロディーにフックがないバラードです。
この曲はLiveでのアレンジのほうが魅力的です。ステージでは後半テンポが倍になり、リッチーのギターソロが爆発する、聴かせどころいっぱいの演奏となっています。この構成は、”Mistreated”、”Love`s No Friend”から継承されたものです。
ジョーのボーカル・パートも新たに付け加えられており、原曲をはるかに超えたドラマチックな展開となっております。
アルバム「Finyl Vinyl」で、聴く事ができます。
6.Power
ジョー版の「Do You Close Your Eyes」です。終始メジャーコードとSUS4で押した、いかにもアメリカンなテイストが漂っています。残念ながら若干パワーが不足している人がPowerと連呼するという少し寂しいナンバーとなっています。
ロジャーのベースラインはポップセンスに満ち溢れていており、この曲を引っ張っています。
Liveでも1982年~1984年まで、欠かさず演奏され続けており、特に「Live Between The Eyes」でみられるリッチーのテンションの高さは特筆すべきものです。
この曲はボブ・ロンディネリとチャック・バーギのドラム・パターンが如実に異なっている為、聞き比べるとかなり印象が異なります。私はこの曲に関してはド派手なプレイのボブ・ロンディネリに軍配があがると考えます。
7.Miss Mistreated
アルバム唯一の4度リフです。限られた音でこんなにも異なる楽曲が作れるものだと感心してしまいます。
すこしだけ本家「Mistreated」を意識させるジョーのボーカルが聴きどころです。ギターソロはEmで解放弦を駆使した80年代リッチーの典型パターンではありますが、起承転結がしっかりしたまとまりあるプレイだと思います。
Liveでは1982年~1984年の2曲目に演奏されていました。ギターソロはスライドで弾かれていた事が多かったようです。
8.Rock Fever
リフ自体はリッチーお得意の単音リフで、イアン・ギランやグラハムボネットだったらそれなりにヘヴィに仕上がったはずです。ジョー・リン・ターナーはマイナーコードで作りこまれたポップソングでは光を放ちますが、この曲のようにシンプルなロックンロール・ナンバーではパワー不足のため、軽薄になりがちです。人には向き不向きがあるので仕方ないですね。
Liveでは一時期Setに入っていた時期があります。
9.Eyes Of Fire
「Eyes Of The World」風のリフからアルバム中最もヘビーな展開を見せる曲です。発表当時、絶大なる人気を誇っていた曲だった記憶がありますが、今は忘れられた存在となっています。リッチーも弾きまくって素敵ですし、もう少し評価されても良い曲かもしれませんね。